・M&A仲介に転職、就職したい人
・M&Aの知識を付けたい人
・M&A業界の用語を知りたい人
そんな方のために、本記事では以下のことを解説します。
- M&Aの一連の流れ
- M&Aで出てくる用語やその意味
- M&Aの代表的なスキーム
未経験でM&A業界に転職したい方の中で、面接対策のためにどのようにM&Aについて調べればいいかと悩んでいる方がいらっしゃると思います。今回は、M&A業界で頻出する用語やM&Aの仕事の流れについて解説を行います。
以下の実績を持つ筆者が徹底解説します
・M&A仲介会社への転職に特化した転職支援サービスである合同会社ユニークボックス代表
・大手M&A仲介会社とベンチャーM&A仲介会社に勤務していた
・300名以上の方との面談を通して、M&A業界の転職を成功させるノウハウを確立
数多くの転職エージェントが存在していますが、「実際に勤務していたからこそ可能な独自の選考対策」が可能な会社はかなり少ないです。その中でも、弊社は大手とベンチャーの両方のM&A仲介会社で勤務したことがあるため、業界では稀有な存在として認知していただいています。
M&Aとは
M&Aとは、株式や経営権の移動が絡む取引の総称です。日本語では、資本提携や資本業務提携と呼ばれています。
所謂ただの業務提携は、資本や経営権が移動していないためM&Aではありません。一方で、事業譲渡というM&Aのやり方は資本は動いていないですが、当該事業に置ける経営権が移動しているためM&Aといえます。
M&A仲介の専門用語
今回は、以下の用語について解説をしていきます。次に解説するM&Aの流れでは、これらの用語がわかっていないと掴みにくいので、しっかりと頭に叩き込むようにしましょう。
- ソーシング
- 受託
- NN(ノンネームシート)
- IM(インフォメーションメモランダム)
- QAリスト
- 買収意向表明書(LOI)
- トップ面談
- 基本合意書(MOU)
- デューデリジェンス(DD)
- 最終契約書
- クロージング
ソーシング
ソーシングとは、M&Aにおける売主を探すフェーズ、アクションのことを指します。主には、譲渡の可能性のある会社に対し、DM送付やテレアポをすることでアプローチしていきます。
受託
受託とは、売主と仲介会社で仲介契約書を締結した状態のことを指し、売主からコンサルタントにM&Aの一連のプロセスを依頼するフェーズになります。
ここの受託がM&Aコンサルタントにとって最も重要なポイントの一つです。また、M&A仲介会社が面接で見ているポイントの一つに「受託ができそうか?」ということもあります。この受託ができるためには、M&Aの知識や業界の知識は勿論のこと、人間性やコミュニケーション能力も必要です。
NN(ノンネームシート)
NN(ノンネームシート)とは、譲渡企業の情報を特定できない範囲で記載したシートになります。中には、ティーザーと呼んでいる方もいます。M&Aコンサルタントは、買手に対して初期的にはこのシートを使って、打診をしていきます。
IM(インフォメーションメモランダム)
IMとは、譲渡企業の買い手を探すために作成する資料のことを指します。会社の基本情報から、株主の情報、事業内容、財務内容などを盛り込んでいきます。
QAリスト
QAリストとは、譲渡企業に対する一般的なQAをまとめたシートになります。これを作成する意図は二つあり、一つはM&Aコンサルタントが譲渡企業について理解を深めるためです。もう一つは、買手企業に検討してもらう際に、初期的なものは一般的な事項についてはこのシートに記載しておくことで、検討しやすくなったりします。
買収意向表明書(LOI)
意向表明書とは、買い手候補企業から譲渡企業に対して差し出すオファーレターのことです。現時点での条件などを記載していきます。
トップ面談
TOP面談とは、譲渡企業と買い手候補企業、M&Aコンサルタントの三者間で行う面談のことです。
基本合意書(MOU)
譲渡企業が、複数の買い手候補企業の中から話を前に進めたい一社を選択し、その会社と譲渡企業とで締結する契約のことです。婚約と巷では例えられることもあります。
デューデリジェンス(DD)
デューデリジェンスとは、買い手企業が実施する譲渡企業の調査のことです。事前に提出していた資料に齟齬がないかという事や、より詳細な情報から買収の検討をするために実施するアクションとなります。
最終契約書
よくSPAと呼んだりしますが、SPAとは、株式譲渡契約書のことを指します。最後の局面となりますので、譲渡企業、買い手企業、それぞれ慎重に条件を調整していきます。
事業譲渡の場合については、SPAではなくAPAといったりします。
クロージング
クロージングとは、全ての取引が完了した段階のことを指します。読者の中には「え?株式譲渡契約書を締結して終わりじゃないの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
大半の案件はそうなので、SPAの締結=クロージングとなります。しかし、そうではない案件もあり、クロージング条項といってSPAの締結後にその条項を満たさないとクロージングしないという決まりになっているケースも存在します。
従って、M&Aの本当の終わりというのは、SPAの締結ではなくクロージングの瞬間ということになります。
M&Aの流れ
M&Aの流れは以下の通りです。
- 譲渡検討企業のオーナーと面談
- 譲渡企業のオーナーとM&A仲介会社が契約(仲介契約書)
- 買い手候補企業への案件打診
- 意向表明書の受領
- トップ面談の実施
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終条件の調整
- 最終契約書の締結、クロージング
譲渡検討企業のオーナーと面談
まずは譲渡検討企業のオーナーと面談するところから始まります。オーナーへの接触方法としては、DMを送付、テレアポ、紹介などの方法があります。
転職してすぐの未経験者の方については、DM送付、テレアポが主なアプローチの方法となります。
譲渡企業のオーナーとM&A仲介会社が契約(仲介契約書)
譲渡検討企業のオーナーと面談後、M&Aの検討を前向きに進めるという場合には、仲介契約書を締結します。仲介契約書に記載の事項は主に以下のとおりです。
契約主体
譲渡企業の株主である個人とM&A仲介会社が3者間契約します。
専任契約の有無
専任契約の場合には、期間を決めることがあり、6カ月〜1年間が主な期間となります。
フィーの内容
着手金の有無、中間金の有無、成約報酬の金額などを後々トラブルにならないよう契約書で決めておきます。
上記以外にも、諸経費の精算や、テール条項、秘密保持などの内容が盛り込まれていますが、主には上記3つとなります。
買い手候補企業への案件打診
次に、譲渡企業にマッチした買い手を探すための案件打診というフェーズになります。案件打診のためには、IMという譲渡企業の説明資料を作成しなくてはいけません。そのためには、資料の収集やQ&Aを実施し、買い手から質問されるであろう事項を予め聞いておくことが大事になります。
案件打診には、如何に幅広く、そして確度の高い買い手企業へ案件を持ち込むことができるかということが大切であり、ここはコンサルタントやM&A仲介会社間での差がでるポイントの一つです。
大手企業では、過去の膨大なデータがありますので、そのデータから最適な買い手企業を見つけることができます。また、AIシステムを導入している会社もあり、そのような場合には、コンサルタントの力量に依存しにくく、良い買い手企業を見つけることができます。
意向表明書の受領
買い手企業へ打診を進めていくと、譲渡企業とのM&Aに関心のある会社が一定数でてきますので、意向表明書を受領していきます。
意向表明書とは、簡単に言ってしまえばラブレターのようなイメージで、以下のような事項を買い手から譲渡企業に対して記載するものになります。
- 買い手企業の紹介(自社の紹介)
- 買収に関心を持った理由
- 買収により期待できるシナジー効果
- 買収後の条件等(オーナーの引継ぎ期間や報酬等)
この意向表明書をM&Aコンサルタントが仲介し、買い手から受領したものを譲渡企業に渡していきます。
M&Aコンサルタントはしっかりと譲渡企業が望んでいる条件や買収により期待することなどを買い手に伝えることが大切です。
また、次に挙げるトップ面談と意向表明書の受領の順番は案件により変動します。
トップ面談の実施
トップ面談とは、譲渡企業のオーナー、買い手企業の代表者(代表取締役、取締役、経営企画部長など。買い手企業の規模感によります)、M&A仲介会社の三者間での面談になります。
トップ面談では、事前に共有していた資料やQ&Aに関する事項の確認や、資料や文面からは読み取れないような事項を確認する場となります。
M&Aコンサルタントは、なるべくこのトップ面談までに、事前に聞けることは書面で聞いておくということをしていくことで、有意義なトップ面談とすることができます。
基本合意書の締結
意向表明書、トップ面談を経て、譲渡企業が本格的にM&Aを進めていく買い手企業を選択することになります。
買い手候補企業が複数社いる場合には、各社の条件や今後のビジョンなどから選択していくことなりますので、M&Aコンサルタントは情報を整理して、譲渡企業のオーナーが選びやすいような資料や環境を作ることが大切です。
基本合意書の締結には、主に以下のような事項が記載されます。
- 株価と今後のデューデリジェンスによる変動要因
- スケジュール
- 基本合意書の有効期限
- 独占交渉権の付与
基本合意書に記載する事項は会社によって異なりますが、上記事項は一般的な内容として入っているケースが大半です。特に、独占交渉権の付与については、買い手としては必ず入れたい事項となっています。
独占交渉権の付与とは、一定期間の間、譲渡企業は基本合意書を締結する買い手企業以外とはM&Aの交渉をしないという文言です。買い手企業としては、基本合意のタイミングで仲介会社へフィーが発生するケースが大半ですし、またお金をかけて次に説明するデューデリジェンスというものを行っていくことになりますので、一定期間、買い手企業の結論が出るまでには、他の会社との交渉を避けて欲しいという魂胆になります。
デューデリジェンスの実施
M&Aの一連の流れの中で、譲渡企業、買い手企業に最も負担がかかるのがデューデリジェンスです。
デューデリジェンスとは、買収監査といって、買い手企業から譲渡企業に対して数多くの資料請求や質問対応などを依頼するアクションとなります。
以下のような側面からデューデリジェンスを実施することが多いです。
- ビジネス
- 法務
- 税務
- 労務
案件の規模感や買い手企業によりますが、デューデリジェンスを社内で完結するか、外部の業者に委託するかというところでも負担が変わってきます。
社内で完結させていく場合には、比較的簡易的なケースもあるのですが、外部の専門業者に買い手企業が依頼するケースでは、かなりの数の質問、資料となります。
譲渡企業側としても、かなり質問攻めになりますし、資料の提出などでかなりの負担となります。
M&Aコンサルタントは、なるべく両社の負担とならないよう、意図が不明な質問の場合には意図を確認したり、質問が重複しているか確認したり、資料の提出においては譲渡企業の会社へ赴いてサポートしたりしましょう。
また、譲渡企業のオーナーは最終局面となり、メンタルもかなり激しく動くところです。心のケアも怠らないようにしていきましょう。
最終条件の調整
デューデリジェンスが終了し、概ねの条件が固まりそうなところで、条件を調整していきます。
基本的には、基本合意書で合意した内容をベースに最終契約書を作成していきます。しかし、デューデリジェンスで減額要素が発見された場合には、株価の調整という形で条件を調整していくことになります。
M&Aコンサルタントは、減額要素が出たとしても譲渡企業のオーナーのメンタルが変動しないように予めケアをしていくことが大切です。具体的には、デューデリジェンスまでに変動要因となるリスクを洗い出して、譲渡企業に説明をするということです。また、買い手企業には、予めそのリスクを説明した上で、意向表明書のタイミングで盛り込んでおいてもらうようにしておきます。
そうすることで、最後の最後で減額された…という譲渡企業のオーナーの心理的なネガティブ要素を減らすことができます。
最終契約書の締結、クロージング
さて、無事に最終条件も固まったら契約書に落とし込んでいって最終契約書の締結、クロージングを行いM&Aが完了となります。
最後のフェーズでは、華やかな会場を借りて成約式を行うケースもあったりします。また、クロージング後には会食へ行くこともあり、安堵の雰囲気の中で、譲渡企業と買い手企業が今後の戦略について話すということもあります。
M&Aコンサルタントとしてはここで案件が終了します。スムーズに案件が進んでいた場合には、譲渡企業のオーナー、買い手企業から感謝の意を伝えられるでしょう。
M&Aの基本的なスキーム
M&A仲介のM&Aスキームでは、大半が株式譲渡となります。あとは、事業譲渡というスキームで、株式譲渡、事業譲渡でスキームの約95%程度を占めるので、今回は株式譲渡と事業譲渡について説明します。
株式譲渡
株式譲渡はM&A仲介の実務において、最も多く使われる手法となります。中小企業のM&Aでは最もポピュラーな手法と言えるでしょう。
具体例を用いて解説します。
譲渡会社:A
譲渡会社Aの株主:a
譲受企業:B
譲受企業Bの株主:b
株式譲渡とは、譲受企業Bに対し、譲渡会社の株主aが保有する譲渡会社Aの株式を譲渡することを指します。代わりに、株主aは譲受企業Bから譲渡代金を受け取ることになります。
従って、株式譲渡後は、譲渡会社Aの株主は譲受企業Bになります。単純に考えたら、株式譲渡とは、譲渡会社の株主が変わるだけの取引ということです。
- 売主は税制的なメリットがある(株式譲渡に係る税金は譲渡益の20.315%)
- 許認可等も包括的に引き継ぐことができる
- 手続きが他のスキームと比較したときに簡単
- 買主は多額のお金が必要となる可能性がある
- 簿外債務も引き受ける可能性がある
- 株主が分散している場合には実行まで苦労することがある
事業譲渡
事業譲渡は、株式譲渡の次に出てくるスキームです。事業譲渡は以下のようなイメージです。
「譲渡企業Aにおける事業xと事業yのうち、事業x(or事業y)のみを譲受企業Bが引き受ける」
上記は、事業xと事業yが関連性がなく、また譲受企業Bが事業xのみを買収したい場合などに活用されています。
特に、大企業の一事業の切り離しなどで活用されることが多く、中小企業の後継者不在の場合については、事業譲渡は活用されることは少ないです。
- 買主は一部欲しい事業のみを買収することができる
- 簿外債務を引き継ぐリスクを減らすことができる
- 法人格を残すことができる
- 会社に譲渡益が入るので株式譲渡より税負担が増える
- 各種契約の再手続等、取引が煩雑となる
- 法人格を残すことができる
M&Aを学びたい人におすすめな本
今回、ご紹介するのは実務のイメージを掴むための本となります。
- M&Aアドバイザー(山本貴之著|エネルギーフォーラム新書)
- M&Aアドバイザーの秘密(村藤 功著|創成社)
- ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏 (服部 暢達|日経BP社)
その他、以下のページでおすすめの本を紹介していますので、是非参考にしてみてください。
>>【面接対策】M&A業界の転職で読むべき本10選!【実務まで】
M&Aアドバイザー(山本貴之著|エネルギーフォーラム新書)
その名もずばりというような本です。M&Aコンサルタントのダイナミズムと泥臭さが感じられる本となっています。今回紹介する書籍の中で最もお勧めしたい本です。
本書は、中小企業M&Aのプロセスが、網羅的に事例を用いて解説されていますので、M&Aになじみがない方でもさらっと読むことができると思います。
M&Aアドバイザーの秘密(村藤 功著|創成社)
かなり昔に書かれた本ですが、サブタイトルにある「トラブルと苦労の日々」という言葉そのまんまの内容を、事例を交えて書かれています。さらっと読める分かりやすい作品です。
ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏 (服部 暢達|日経BP社)
有名な本です。M&A仲介会社ではなく大手投資銀行のM&A部署が話の部隊となっています。みんなが知ってるような有名な会社同士のM&Aがノンフィクションで書かれている数少ない書籍です。
M&Aを学びたい人におすすめなコンテンツ
最後に、M&Aを学びたい人におすすめなコンテンツとして、Youtubeがあります。おすすめのYoutubeチャンネルは以下のチャンネルです。
・M&A仲介業界への転職・新卒就活チャンネル byユニークボックス
https://www.youtube.com/@unique_box
M&A経験者がM&Aや会社、転職者インタビューなどを載せています。
・M&A BANK
https://www.youtube.com/@MABANK2018
M&Aで売却を経験したオーナーがゲストとして出演するチャンネルで、M&A売却のリアルやその後を知れると思います。
・マックス山本TV
https://www.youtube.com/@TV-ji7tw
M&Aを検討している人向けに発信しているチャンネルですが、転職者も満足して見ることができると思います。
まとめ
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