M&Aの仕事内容

M&A業界とは?仕事内容・企業分類・年収・将来性を体系的に解説!キャリア選択のための業界研究ガイド

M&A業界とは?仕事内容・企業分類・年収・将来性を体系的に解説!キャリア選択のための業界研究ガイド

M&A業界は高年収や成長市場として注目される一方、仲介会社やFA、FASなど多様なプレイヤーが存在し、全体像を理解しにくい業界でもあります。

業界研究を進めるうえでは、単なる企業情報だけでなく、役割の違いや求められるスキル、キャリアの方向性を整理して理解することが重要です。

本記事では、M&A業界の基本構造や仕事内容、市場動向、年収水準などを体系的に整理しながら、自分に合うキャリアの考え方まで分かりやすく解説します。

以下の実績を持つ者が監修しております
大冨 翔太郎

ユニークボックス CMO
大冨 翔太郎(おおとみ しょうたろう)
新卒で大手M&A仲介会社である株式会社ストライクに入社。入社後は30件以上のM&A案件を手掛け、同社において成績上位者として表彰を受けるとともに、最年少での昇進を果たすなど数々の実績を残す。2023年5月に独立し、代表である梶川とともに合同会社ユニークボックスを設立。若手の未経験者から経営層に至るまで、多様な層の転職支援を手掛け、豊富な実績を築いている。

M&A業界とは?まず理解しておきたい全体像

M&A業界への転職や就職を考える際、最初に押さえるべきは業界全体の構造です。「どんな仕事をしているのか」「なぜ市場が伸びているのか」「分かりにくいと感じる理由は何か」を理解することで、企業選びやキャリア設計の土台が築けます。

M&A業界の基本的な役割とビジネスモデル

M&A業界の役割は、企業同士の合併・買収プロセスを専門知識で支える「仲介・アドバイザリー機能」にあります。買い手・売り手の利害調整、相手先の探索、企業価値の算定、交渉支援、契約書作成といった高度な実務をサポートするのが業界のプレイヤーです。

ビジネスモデルは成功報酬型が主流で、「基本報酬(着手金や月額フィー)+成功報酬(成約時の手数料)」の体系を取ります。1件あたり数千万〜数億円規模の手数料が発生するケースもあり、人件費以外に大きな設備投資を要さないため利益率が極めて高い業態です。

この構造を背景に、上場大手M&A仲介会社の平均年収は1,000万〜2,000万円超が通例です。M&Aキャピタルパートナーズは2024年9月期に平均年収2,277万円を記録しました。ただしこれは業績が好調な大手企業のデータであり、すべてのM&A関連企業が同水準というわけではありません。企業規模や職種、成果報酬比率によって年収レンジは大きく異なります。若手でも実績次第で20代から年収1,000万円を超える事例がある一方、成果が出ない時期は基本給水準にとどまるリスクも伴います。

出典:M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 第19期 有価証券報告書(2024年9月期) 

なぜ今M&A市場が拡大しているのか

市場拡大の背景には、複数の構造的要因があります。

経営者の高齢化で事業承継ニーズが急増している

日本企業の99.7%を占める中小企業(※中小企業基本法に基づく定義)では、経営者の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。後継者不在企業の増加に伴い、第三者への事業承継(M&A)を選択肢とする企業が年々増加傾向です。

中小企業基盤整備機構が公表している「事業承継・引継ぎ支援センター」の実績によると、第三者承継(M&A)の成約件数は2023年度・2024年度ともに過去最高を更新しています。特に2024年度は2,132件と過去最多を記録しました(公的支援機関を通じた成約件数ベース)。

このように、親族内承継が難しい企業にとって、M&Aは事業を存続させるための有力な手段として着実に浸透しています。

※上記件数は「事業承継・引継ぎ支援センター経由の公的支援案件」に限定された統計であり、民間仲介会社のみで成立した案件は含まれていません。

出典:中小企業基盤整備機構「令和5年度 事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」 

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「News Release」

大企業の事業再編・スタートアップ買収が活発化している

守りの事業承継だけでなく、攻めのM&Aも増加しています。コロナ禍後の業界再編に加え、IT・DX分野を中心に技術獲得型M&Aが活発化しているほか、上場企業による事業ポートフォリオ見直しの一環としてカーブアウト案件も増加傾向にあります。

マッチングプラットフォームの普及で小規模M&Aが身近になった

TRANBI・BATONZなどのオンラインマッチングプラットフォームが登場し、個人や小規模事業者でもM&Aにアクセスしやすい環境が整いました。従来は仲介会社を通じた大型案件が中心でしたが、数百万〜数千万円規模のスモールM&A市場が拡大しつつあります。こうした要因が重なり、レコフデータの集計(公表案件ベース)によると、2024年の国内M&A件数は4,700件(前年比17.1%増)と過去最多を更新しました。

出典:株式会社レコフデータ「2024年のM&A回顧(2024年1-12月の日本企業のM&A動向)」

M&A業界が「分かりにくい」と言われる理由

最大の理由はプレイヤーの多様化です。大手専門会社から地域特化のブティックファーム、会計事務所系、PEファンド、金融機関まで関与する企業の幅が広く、「カオスマップ」が作成されるほど構造が複雑になっています。

加えて、案件情報はNDA(秘密保持契約)で保護されるため外部から実態が見えにくく、各社の手数料体系や得意領域の違いも把握しづらい状況です。業界を正しく理解するには、タイプ別に分類して整理するアプローチが有効です。

M&A業界の企業分類とキャリアの違い

M&A業界の企業は、業態とサービスモデルの軸で大きく4つに分けられます。それぞれ役割・報酬体系・キャリアパスが異なるため、自分の志向に合ったタイプを把握しておくことが企業選びの第一歩です。

企業タイプ主な役割代表企業
M&A仲介会社売り手・買い手の間に立ち成約を橋渡し日本M&AセンターHD、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク
FAS(専門アドバイザリー)財務DD・バリュエーション等の専門領域に特化デロイトトーマツFA、PwCアドバイザリー、KPMG FAS
PEファンド自ら買い手となり企業価値向上後に売却ポラリス・キャピタル・グループ、ベインキャピタル
投資銀行大型・クロスボーダーM&Aのリードアドバイザーゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、野村證券

M&A仲介会社の特徴

売り手・買い手双方を支援するケースが多い業態です。双方から成功報酬を受け取る「レーマン方式」(取引額に応じた料率で手数料を算出する方法)が一般的です。代表企業は日本M&AセンターHD、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所などで、日本M&Aセンターは年間成約1,000件超の実績を持ちます。

キャリアの特徴は営業力重視・高インセンティブです。案件開拓からクロージングまで一貫して担当し、成果次第では若手でも高収入を実現するケースがあります。未経験からの育成に注力する企業も増えており、営業マインドがあれば異業種からの挑戦も可能です。

FAS(専門アドバイザリー)の特徴

FAS(Financial Advisory Services)は、財務デューデリジェンス(買収先の財務状況を精査する調査)、バリュエーション(企業価値評価)、法務DD、PMI(買収後の統合支援)など、M&Aプロセスの特定領域に特化した専門サービスを提供するファームです。

Big4系列のデロイトトーマツFA、PwCアドバイザリー、KPMG FAS、EYなどが代表的で、公認会計士や税理士が多数在籍しています。報酬は専門職ベースで安定しており、FAS出身者がPEファンドや事業会社のM&A企画部門に転じる事例も多く見られます。

PEファンドの特徴

PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)は、投資家から集めた資金で企業を買収し、経営参画を通じて企業価値を高めた後に売却して利益を得るファンドです。自らが「買い手」になる点が仲介やFASとの大きな違いになります。ポラリス・キャピタル・グループやベインキャピタルなどが代表的です。

キャリアとしては、財務分析力に加えて経営改善の実行力が求められます。コンサルティングファームや投資銀行、M&A仲介出身者が転じるケースが多く、報酬水準も高い傾向にあります。

投資銀行の特徴

投資銀行は、大企業間の大型M&AやクロスボーダーM&A(国境を越えた買収)でリードアドバイザーを務める金融機関です。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの外資系IB、野村證券やみずほ証券などの日系証券会社が該当します。

案件規模が数百億〜数兆円に及ぶことも多く、高度な財務モデリングや交渉力が求められるでしょう。報酬は基本給・ボーナス共に高水準で、若手でも高水準の報酬を得られるケースが多くなります。

M&A業界の仕事内容と働き方の実態

M&A業界は高収入の反面、「激務」のイメージも根強い業界です。案件の進め方と企業タイプごとの働き方の違いを理解しておくことで、自分に合った環境選びに役立ちます。

M&A案件の基本的な流れ

  1. 案件開拓・着手:アドバイザーへの相談・契約、NDA締結、企業概要書の作成
  2. マッチング:候補企業の探索・絞り込み、トップ面談(経営者同士の顔合わせ)
  3. 交渉・基本合意:条件交渉を経てLOI(基本合意書)を締結(独占交渉権など一部条項に拘束力あり)
  4. デューデリジェンス(DD):財務・税務・法務等の詳細調査。専門家チームが数週間〜数か月で実施
  5. 最終契約・クロージング:最終契約書の締結と株式・事業の譲渡実行
  6. PMI(買収後統合):組織・制度・ITの統合作業

「相手探し→交渉→調査→契約→統合」の大枠はどの案件にも共通しています。

忙しさが生まれる理由とプロジェクト型業務

激務の主因は、仕事がプロジェクト型で進むことにあります。複数案件のピークが重なると深夜対応が避けられず、デッドラインに向けた追い込みや夜間・週末の交渉も発生します。繁忙期には長時間勤務となるケースもあるでしょう。一方、近年は分業制の導入やAI活用による効率化が進んでおり、働き方は改善傾向にあります。

企業タイプによる働き方の違い

同じM&A業界でも、企業タイプによって業務スタイルは大きく異なります。仲介型とFA・コンサル型に分けて整理します。

仲介型企業の働き方

日中は経営者訪問や紹介・セミナー・問い合わせ対応などを通じた案件開拓、夕方以降は資料作成や条件整理などのデスクワークが中心となります。数値目標が設定されている企業が多く、出張頻度も高くなるでしょう。近年は電話アポイント専門チームや資料作成担当のアナリストを配置するなど、分業化も進んでいます。

FA・コンサル型の働き方

プロジェクトベースでチームワークを重視するスタイルです。案件獲得は指名や紹介が中心で、飛び込み営業は少なめです。高めの固定給+賞与が主な報酬体系で、新人への研修・OJTも手厚い傾向にあります。

M&A業界の年収・将来性・求められるスキル

M&A業界の「高年収」の実態と将来性、求められるスキルを正しく把握しておくことが、キャリア選択の質を高めます。

年収水準と報酬体系の特徴

上場仲介会社では平均年収が1,000万円超の企業も多く、業績連動で高水準となっています。M&Aキャピタルパートナーズは2024年9月期に平均2,277万円、M&A総合研究所HDやストライクでも1,000万〜1,500万円台を維持しています。

企業タイプ報酬の特徴年収イメージ
M&A仲介会社インセンティブ比率が高く、成果で大幅変動入社2〜3年目:500〜800万円、30代後半〜:2,000万円超も
FA・コンサル型基本給高め、ボーナスはやや抑えめ30代マネージャー:1,200〜1,800万円程度
外資系投資銀行基本給・ボーナス共に高水準若手でも高水準の報酬を得るケースが多い

高年収は成功報酬型モデルと人材の希少性に支えられていますが、成果主義の裏返しでもある点は理解しておく必要があります。

出典:M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 第19期 有価証券報告書(2024年9月期) 

出典:株式会社ストライク 第28期 有価証券報告書(2024年9月期) 

出典:株式会社M&A総合研究所HD 有価証券報告書(2024年9月期) 

業界の将来性と市場動向

日本のM&A市場は今後も拡大が見込まれます。事業承継ニーズの継続、スモールM&Aの一般化、産業再編の加速、AIなどテクノロジーの活用が主な成長ドライバーです。

欧米と比較すると相対的に低い水準とされることもあり、中長期的な拡大余地があるとの見方もあります。この拡大基調は、M&A人材への高水準の報酬を支える追い風にもなるでしょう。ただし、市況次第で変動する側面もあります。

求められるスキルと適性

M&A業界で活躍するために求められるスキルは多岐にわたります。主なものは以下の6つです。

スキル内容
営業力・交渉力経営者への提案営業や、双方が納得できる落としどころを探る交渉術
財務・会計知識BS(貸借対照表)・PL(損益計算書)・CF(キャッシュフロー計算書)の読解力、DCF法(将来キャッシュフローから企業価値を算出する手法)などの評価手法
論理的思考力事業シナジーの検討や最適なスキーム(取引の枠組み)の選定
コミュニケーション能力専門家・経営者との調整力と信頼構築力
タフネス長期案件に耐える精神的・肉体的な粘り強さ
英語力(あれば尚可)クロスボーダーM&Aで活躍の幅が広がる

すべてを最初から備えている人は稀であり、強みを軸に足りない分野を吸収していく姿勢が大切です。

キャリア選択の視点|自分に合う企業・職種の考え方

M&A業界には多様な企業タイプや職種があり、志向や適性によって目指す道は大きく変わります。3つのパターンに分けて整理します。

営業志向・高年収志向の場合

M&A仲介会社が最有力の選択肢です。成果報酬型のインセンティブが大きく、成果次第では20代で1,000万円超、30代で数千万円に到達するケースもあります。経営者を相手にビジネスを動かす手応えも仲介ならではの魅力です。

法人営業でのトップセールス経験がある方や、保険・不動産営業出身者が転職して成功する事例も多く見られます。

分析・専門職志向の場合

FAS・コンサル系や金融機関系M&A部門が向いています。財務DDやDCFモデルによる企業価値算定など、緻密な分析業務が中心です。公認会計士やCFA(米国証券アナリスト資格)、MBAホルダーは保有していると評価されやすく、専門性を積み上げるほど将来の選択肢が広がります。

未経験から目指す場合の考え方

未経験者を受け入れる企業も増えており、準備次第で十分チャンスはあります。未経験からM&A業界を目指すうえで、押さえておきたいポイントは以下の4つです。

  • 現職で実績を作る:トップセールスやプロジェクト成功など、ポテンシャルを示せる成果を積んでおく
  • M&A基礎知識を習得する:DD・バリュエーション・NDA等の用語理解、簿記2級程度の会計知識
  • 転職エージェントを活用する:M&A業界特化のエージェントから未経験可求人や選考対策の情報を得る
  • 応募先を見極める:20代なら仲介会社の若手枠が狙い目。30代は隣接業界経験があると有利

未経験だからこそ、「どの企業タイプが自分の経歴と相性が良いか」を見極めることが重要です。判断に迷う場合は、M&A業界に精通した転職エージェントに相談し、自分の市場価値や狙えるポジションを客観的に把握するところから始めてみてください。

まとめ

M&A業界は、成果連動型の報酬制度を背景に、高い収益性を持つビジネスモデルとして注目されています。拡大する市場ニーズを背景に、キャリアの選択肢として大きな魅力を持つフィールドです。仲介会社・FAS・PEファンド・投資銀行とプレイヤーは多様で、それぞれ役割・報酬・求められるスキルが異なります。

営業志向で高収入を狙うのか、分析志向で専門性を極めるのか、未経験からポテンシャルで挑戦するのか。自身の強みと志向を軸に方向性を見定めることが、キャリア構築の第一歩です。

とはいえ、業界の情報は外から見えにくく、自分に合う企業や職種を一人で判断するのは簡単ではありません。M&A業界に精通した転職エージェントに相談することで、非公開求人の紹介や選考対策など、効率的に転職活動を進められるでしょう。

弊社ユニークボックスは、M&A業界に特化した転職支援を行っています。業界経験豊富なアドバイザーが、あなたの経歴や志向に合った企業選びから面接対策まで一貫してサポートいたします。M&A業界への転職に少しでも興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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